客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
そこで二葉ははっとする。清潔感のある黒髪、整った顔立ち。この顔ってもしかして……。
それは相手も同じだったようで、お互いの顔を見つめ合う。
「……二葉さん?」
「はい、二つの葉っぱって書きます」
二葉は彼の表情を見逃さないよう慎重に言うと、副島は驚いたように口元を押さえた。
「あぁ、ごめんね。副島匠です」
やっぱり……! 二葉は驚きで涙が出そうになるのを堪えた。それを見て彼は困ったように微笑んだ。
あの日の記憶で止まったままの匠さんが、あの頃よりずっと大人の男性となって私の前に現れた。
色褪せない思い出の彼を前にして、二葉は久しぶりに胸が高鳴る。
しかしその"色褪せない思い出"と、六年の時を経た"今の想い"の間で、二葉の心は複雑に入り乱れたのも事実だった。