客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
「事実を教えてくれたら、変な想像なんかしないんだけどなぁ」
彩花は片肘をついて手に顎を乗せると、にっこりと笑みを浮かべた。
「……絶対?」
「もちろん」
「……実は、前に話した秩父の彼が副島さんだった」
ワインが少しまわり始めていたからか、二葉はうっかり口を滑らせてしまう。
だがそれを聞いた三人は、あまりの衝撃発言にイスから転げ落ちそうになった。
「ちょ、ちょっと待って! 秩父の彼って、初対面にも関わらず三日間も一緒に過ごして、夜はムニャムニャしまくっちゃったって言う、例の彼⁈」
「……あぁやだ、言わなきゃ良かった!」
「いやいや、重要なことよ! で、どうなの? 何か進展はありそうなわけ?」
「わかんないよ……とりあえず明日の夜に約束したけど、まただめんずに引っかかるかも〜って思うと怖いのよ。それなら仕事に打ち込みたい」
「ふーん……まぁまだ初日だしね。ところでさっき二葉ちゃんが言った基準って、やっぱり副島さんのことなの?」
彩花の問いかけに、二葉は渋々頷いた。
「じゃあ副島さんは趣味とか価値観が同じだったんだ?」
「趣味に関してはぴったり。食事の選び方も無理してないし、ただ……」
「ただ?」
「すごい高級ホテルに宿泊してたんだよね……あれだけ今も謎」
「……副島さんってお金持ち?」
「知らない。でも何か裏がある?」
「もしかして怪しいバイトとかで稼いだとか?」
美玲の言葉に、二葉は一瞬固まった。先生とって言ってたけど、お金が絡む関係には聞こえなかった。
「でもさ、なんかそういうワンナイトラブっていうの? ちょっと憧れるかも〜」
「そう? 身分のわからない男となんて気持ち悪くない?」
「私は先の見えない男に体を許すなんて嫌だわ。でも、相手が副島さんならありかもね」
「ま、まぁ、私のことは何かあったら話すからさ。彩花は何があったの?」
すると彩花の表情が曇る。運ばれてきたサラダを二葉が取り分け、彩花の話に耳を傾けた。