客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
今の二人
 匠の目は、気付くと二葉を追っている。

 秩父で初めて会った時は、黒髪のミディアムヘアだったが、今は落ち着いた茶色の髪にあてられた緩やかなウェーブが、二葉の温かい雰囲気をより引き立てていた。

 俺のことをやけにライバル視してくる同期の木之下の補佐として働く二葉は、いつも楽しそうに仕事に取り組んでいる。

 秩父で話しかけられた時、本当は不信感でいっぱいだった。というのも、いきなり声をかけてくる女子に抵抗があったし、俺自身が普段以上に荒んでいて、その心をどうにかしたくてあの日秩父に出かけた。

 だから二葉に声をかけられた時は適当に……というかぶっきらぼうに返答した。それが彼女を傷付けたということに気付いた時、俺はようやく正気に戻ったんだ。

 二葉は素直で優しくて、悪いことをしたことがないような無垢な少女だった。彼女といると、少しずつ穏やかな気持ちを取り戻していった。
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