客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 二葉は最寄りの駅で降り、バスに乗って一番札所を目指す。こんなお昼過ぎから始める人もいないだろうな……そう思っていた。

 秩父に古くからある観音霊場は、日本百番観音にかぞえられ、ここ秩父だけ三十四カ所を巡る。二葉の家からは電車で乗り換えずに行けるため、休みの日に少しずつ巡り、一巡を昨年終えたところだった。

 好きだった観音巡礼も、人付き合いを優先していると出来なくなる。時間はもちろん、体力も必要だからだ。

 最近は御朱印ブームのせいか、一緒に行きたがる友人もいたが、二葉が好きなのはそんな甘い世界ではない。

 二葉の巡礼があまりにストイックなため、友人たちは話題にすら出さなくなった。

 御朱印が『素敵』って言う女子とは、まず目的が違う。
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