客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

「……タイプじゃなかっただけです。いくら弱っていても、親身に話を聞いてくれたからって流されません」
「それって、俺はタイプだったってこと?」
「真面目に巡礼しているってだけでタイプでしたよ」
「えっ……めちゃくちゃ嬉しいんだけど」
「だって匠さんに声かけた理由は、そういう姿勢を見て話したくなったんだもの」

 匠はグラスを手にしたまま、徐々に口角が上がり、嬉しそうにニヤける。

「辛いことがあって、それを癒すみたいに体を重ねちゃいましたけどね……。でもそれよりも匠さんと一緒に三十四観音様を巡れたことが、私は本当に楽しかったんですよ」
「そうだね……俺もすごく楽しかった。あれから秩父には行った?」
「一度だけ。あとは都内をちょこちょこ回りましたよ。江戸三十三観音様とか、東京十社とか。御府内はまだこれからだけど……」

 二葉が言うと、匠は突然目を輝かせ始める。そして二葉の手を取る。

「何それ。すごく魅力的な言葉」

 この人は本当に寺社仏閣が好きなのね。やはりこうして趣味の話が出来ること、食いついてもらえること、共有出来ることが何よりも嬉しい。
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