客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 どうしてかな……匠さんが相手だと、私の警戒心が弱まるようだった。

「あの……もし良かったら一緒に行きませんか?」
「えっ……」

 あの日に自分から話しかけた時の気持ちが蘇る。

「坂東三十三観音様の前に、まずは都内を散策しませんか? お互いに調べて、いろいろ出かけるの。私はいつも一人だから、匠さんが一緒なら嬉しいな」

 匠は握っていた二葉の手を愛おしそうに触れたかと思うと、どこか泣きそうな顔になる。二葉は心配になり、彼の手に自分の手を重ねる。

「匠さん?」
「……たった三日一緒にいただけなのにな。二葉があの日と変わらないことが、こんなにも俺を安心させる」

 二葉の手に口付けると、匠は彼女の瞳をまっすぐ見据える。真剣な眼差しに捕らえられ、二葉は動けなくなる。
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