客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 唇が離れると、思わず『もっと……』とねだってしまいそうになった。

「六年振りのキスだ……やばい、もっとキスしたい」

 顔を真っ赤にして両手で口元を押さえた匠に、二葉の胸の鼓動が止まらない。匠さんも同じ気持ちだということが嬉しかった。

 でも……やっぱり我慢出来ないのは私の方だ。キスだけでこんなに胸が掻き乱される。体の奥が疼く。

「……ねぇ匠さん、注文したメニューって全部来てる?」
「えっ、うん、来てるよ」

 二葉は(おもむろ)に立ち上がると、テーブルの向こう側の匠の膝の上に座る。そして彼に軽くキスをする。

「……キスだけ……私も我慢出来なくなっちゃった……」

 驚いたように目を見開いた匠の頬が緩み出す。

「うん……個室で良かった……」

 二葉は匠の首に手を回し、何度もキスをする。私ってこんなに大胆だったっけ……。それともただの欲求不満? それでもこの欲望には勝てないの。

 体に回された匠の腕の感触は、あの夜と変わらず力強くて、体が熱くなる。

 互いの匂いと唇と舌の感触が、二人をあの日に引き戻すかのようだった。
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