客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
その時資料室のドアが開く音がする。誰かが入って来たようだが、またすぐに出て行く音が聞こえた。
「……行った?」
「うん、大丈夫そう」
二葉が聞くと、二人の視線がぴたりと合う。匠は最後に吸い付くようなキスをする。
「充電完了。先に戻るね」
「うん、私はもう少し待ってからにする」
お互いバレないように気をつけているものの、最近の匠の積極的なスキンシップのお陰で、二葉はいろいろな意味でのハラハラドキドキが止まらなかった。
社内恋愛が禁止ではないが、発覚して気まずい思いをしている人を何人も見てきた。
やっぱりバレないようにしなくちゃ……。私はどうにでもなるけど、匠さんがそんなふうになるのだけは避けたかった。
二葉は唇に触れて目を閉じる。キスをしたら我慢出来なくなると思っていたのにな……不思議とキスで満足出来てる自分がいるの。
ただのスキンシップ。でもこれがなければもっと彼を求めてしまいそう。それこそ体だけと思われてもおかしくない。
手を繋ぐとドキドキする。キスが気持ちよくてとろけそう。彼の指が触れると恥ずかしくなる。
私の中で匠さんの存在が日毎に大きくなって、好きの割合は七割くらいに上がったような気がするの。
あと三割、どうしたら埋まるのかしら? 恋って本当に難しくて、もどかしくて、面倒くさくて、でもこのドキドキがちょっとだけクセになる。