客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 その仕草を三人は見逃さなかった。隣に座っていた美玲が二葉の頬を指でつつく。

「なーに一人でニヤニヤしちゃってるの? もしかして副島さんと進展でもあった?」

 そう言われて二葉は顔を赤く染めると、両手で顔を覆う。

「えっ⁈ ちょっと待って⁈ それってどういう反応⁈」
「もしかして、付き合い始めたとか?」

 二葉はしばらく視線が泳いでから、小さく頷く。

「でも内緒ね! 誰にも言わないでよ!」
「まぁそれは二葉次第かなぁ」
「いろいろ教えてくれないと、口が滑っちゃうかもしれないな〜」
「そうそう。で、いつから付き合うことになったの?」
「……彼が帰国してすぐ。付き合ってって言われて……」
「マジか……。そういえば前に『幻想を打ち砕くために付き合う』って言ってたけど、実際の彼は幻想と比べてどうだった?」
「……幻想と変わらなかった……。というか、あの日に会った時のままの人だった。でも……なんというか、まだ恋としての好きになってない気がするんだよね。あの日は友達と関係を持ったみたいな感じで……」
「いきなりのセフレ宣言?」
「まぁ近いのかも。だからね、付き合うけど、ちゃんと好きになるまでは体の関係は持たないって宣言した」

 全員の手が止まったかと思うと、大声で笑い出す。

「副島さん、それでいいって? 偉いなぁ。なんか好印象なんだけど」
「ちゃんとって何? 好きかも〜みたいなグレーゾーンじゃダメなの?」
「匠さんは八割好きって言ってくれたけど、私は今は七割くらい。だからちゃんと十割好きって言えるくらいにならないとダメなのかなぁって……」

 二葉は困ったように下を向いた。自信を持って大好きと言えないと、匠さんと向き合っちゃいけないような気がする。
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