客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 それを聞いていた彩花は大きく頷いた。

「でも二葉ちゃんのそれって、私の悩みと被るかも」

 彩花はチキンのハニーマスタードソースを口に入れながら空を仰ぐ。

「合コンでの『カッコいい』とか『素敵』っていうのと、心の底からの『好き』っていう感覚は違うわけでしょ? なんかその感情がご無沙汰すぎてわからなくなってる」
「確かにねぇ……好きの基準って難しいかも。でも百パーセントの好きってあるのかなぁ。だってさ、ちょっと嫌な部分もあったりしない? 例えば足が臭いとか」
「好きな人ならそれも可愛く見えるんじゃないの?」
「いや、臭いものは臭いでしょ」
「食事中に臭いのはやめない? せめて足フェチとかさ」
「それもどうかと思うけど。もし同じ円グラフ内に好きと嫌いが存在したら、絶対百パーセント好きにはならないよね。だから百パーセント好きを求めなくてもいいんじゃない? 人間だもの、欠点だっていっぱいあるし」
「そうそう。ちなみに二葉は副島さんのどんなところにキュンとくるの?」

 頭の中で匠の姿を思い出す。あの日から今日まで、日数にすれば少ないのに、様々な姿が思い浮かぶ。

「優しい話し方、笑顔、長い指、プレゼンの時は落ち着いて話す姿が大人っぽくて素敵だし、疲れちゃうと甘えてくるところとかかわいいし、お寺のことを教えてくれるちょっと得意になった顔とか、運転してる時の色っぽい横顔とか……」
「……それで好きが七割とか驚きなんだけど」
「まぁ彩花は二葉のこれを参考にするといいよ」
「……頑張ってみる」
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