客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
木之下は怪訝そうな顔で匠に近寄る。
「お前、甘いもの大好きだったよな」
「だとしても、食べたくない時だってあるんだよ。なぁ、せっかくだし来宮神社に行きたいなぁ。あとロープウェーで上まで行こうよ」
「そんなことしてたら、さっきの子たちの終わる時間に間に合わないぞ」
「大丈夫だよ。間に合わなかったら、宿で合流すればいいし」
「お前って奴は……」
木之下は呆れたように頭を掻くが、諦めて歩き出す。その様子を見て、匠はにっこり微笑む。
「木之下ってば、なんだかんだ俺に優しいよなぁ」
「うるさい。そうするしかないんだから仕方ないだろ。ほら、行くぞ」
二葉が木之下について行こうとすると、美玲が手を出して止めた。
「二葉は副島さんと一緒においで。私が木之下さんについて行くから」
「あ、ありがとう!」
美玲は二葉にウインクをすると、木之下の隣に走り寄った。それを見ていた匠は驚いた様子で、前方を歩く二人の背中を見つめた。
「付き合ってること、二人に話した?」
「あっ、美玲にだけ……ダメだった?」
「そうなんだ……いや、ダメじゃないよ。信頼出来る友達なんでしょ?」
二葉が頷くと、匠はにっこり笑って彼女の頭に手を載せる。たったそれだけのことで、二葉の中に安心感が広がる。
「ん? どうかした?」
「なんでもない……やっと匠さんに触れたから嬉しかっただけ……」
「……二葉」
「何?」
「キスしたい」
匠は真剣な眼差しで二葉を見ていた。あぁ、どうしよう。胸が苦しい。
「……私だって我慢してるの。だからダメ……」
「大丈夫、わかってるって」
匠の指が二葉の指に絡む。もっと触れたい……でも今はここまで。
衝動をグッと抑え、二人は木之下と美玲を追いかけた。