客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
秘密の二人

後編

 匠は遠目ながら、二葉の様子を観察していた。仲の良い友人達と楽しそうに会話に花を咲かせている。

 しかし二葉はフラフラしながら立ち上がると、他のメンバーに手を振って宴会場から出ようとしたのだ。

 二葉、かなり酔ってないか?

 心配で思わず立ち上がろうとした瞬間、先程一緒に観光をした大迫(おおさこ)美玲(みれい)が俺に鋭い視線を送ってきた。かと思うと、まるで二葉を追いかけろとでも言うように首を振る。

 それを合図と受け取り、匠は頷き立ち上がる。

「副島?」

 不審そうに匠を見る木之下に、匠は笑顔を向ける。

「今日中に返信しないといけないメールがあったんだ。それだけ済ませてくる」

 そして匠はエレベーターへ急ぐ。木之下、意外と勘が鋭いからなぁ。もしかしたらバレてるかもしれない。でも今はこれ以外に言い訳が見つからなかった。

 宴会場を後にしてエレベーターへと向かうと、そこには二葉しかいなかった。匠はホッとしたように彼女の後ろに立つ。たぶん二葉は気付いていない。

 エレベーターが到着して中に乗り込むと、背後から現れた匠の姿に二葉が驚く間も無く、ドアが閉められる。

「匠さん……? もしかして心配して来てくれた?」
「……フラフラじゃない。そりゃ心配にもなるよ」

 エレベーターがいつ止まって、誰が入ってくるかわからない。油断せずにいよう。そう思ったのに、匠の指に二葉の指が絡み、寄り掛かってくる。

 二人だけのエレベーターはとても静かで、モータ音が心地良く響く。
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