客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 この人はどうしてこんな顔をしているのだろう。二葉は気になり、彼から目が離せなくなる。

「……君は輪袈裟は持ってるの?」
「……ありません」

 すると彼はお店の人に輪袈裟を二つ渡してお金を払うと、二葉の手を取ったまま外に出る。

「ごめんね。傷付けるつもりはなかったんだ。これはお詫び」

 そして輪袈裟を二葉の首にかけると、優しく微笑んだ。

「そんな……! 話しかけたのは私だし、いただけません!」
「でも封開けちゃったし、首にかけちゃったし」
「じゃあお金を支払います!」

 リュックから財布を出そうとした二葉の手を彼は制す。

「君、一人で来たの?」
「……はい」
「今日は一箇所目?」
「そうです。さっき着いて、これから歩いて順打ちで回ろうかなって……」

 二葉が言うと、彼は顎に手を置いて何かを考えているようだった。

「……あのさ、ちょっと提案なんだけど」
「……提案?」
「そう。もし良かったらなんだけど、俺の車で一緒に回らない?」

 二葉は体の力が抜けた様に、リュックを探っていた手がすとんと落ちる。
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