客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 すると彩花が嬉しそうに口を押さえる。

「匠さんだって……! どうしよう、友達の彼氏の話にこんなにきゅんとしちゃうなんて……!」
「彩花は早く彼氏を作った方がいいよ。その気持ちを受け止めてくれるような、優しい人がいいね」
「……そういう人がいないから悩んでいるんでしょ……」

 大きなため息をつく彩花の肩を、二葉が何か言いたげに叩く。

「何?」
「彩花、今度一緒に東京十社を巡ろうか⁈ なんかね、何度も回った人で願いが叶った人がいるんだって! 良縁祈願だよ!」

 意気揚々と話す二葉に対し、彩花の顔からは血の気が引いていく。

「……嫌よ。二葉ちゃんと一緒に行くと、あまりにハード過ぎて次の日動けなくなるんだもん」
「それはお参りの証じゃない!」
「……聞きたいんだけど、副島さんもこんな感じなの?」
「うん。二人だとサクサクお参りが進むから、やっぱり巡礼とかは匠さんじゃなきゃ嫌だなぁって思うよ。でも都内のお参りなら……」
「大丈夫。二葉ちゃんは副島さんと仲良くお参りして」
「じゃあせめて愛染明王様の御利益が有名な目黒不動に……」
「わかった! 今度一人で真剣にお参りするから! 仏女(ぶつじょ)トークの二葉ってしつこいから嫌〜!」

 二人の会話を聞きながら、京子と美玲は笑いが止まらなくなる。
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