客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
* * * *

 金曜日、二葉はいつもより大きめのカバンに下着や洋服、メイク道具などを入れて出勤した。

 いつもと違うカバンだし、誰かに見られるのではとソワソワしたが、なんとか切り抜ける。  

 仕事を終えて匠のマンションへ向かおうとした時、美玲だけには見られてしまうが、ニヤニヤしただけで何も言われなかった。

 あれは後で詮索されるパターンだろうな……覚悟しておこう。

 二葉は会社の最寄り駅の構内に入ると、いつもとは違う電車に乗る。遊びに行く時には使う路線だが、これに乗って彼の家に行くなんて不思議な感覚だった。

 元々彼氏がいたのは大学の時の一人だけだし、嫌な思い出しかない。

 そう考えると、匠さんとの日々は全てが新しい。こうして匠さんとの思い出が、嫌な記憶を上書きしてくれる。

 でもあの日のことは上書きしないで欲しいな……。だって良いことしかないから。
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