客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

「どうぞ〜」

 匠に招き入れられ、部屋の中へと入っていく。天井の高いリビングダイニングには、L字型の茶色い革張りのソファが存在感を示していた。

 その前に置かれたローテーブルは、中がコレクションケースになったガラス製で、時計やサングラスが飾られていた。

 だが匠は何も気にせず、その上に先ほど買った食品を並べ、手際よく飲み物なども準備した。

「旅先での出会いが、こんなふうになるなんて思わなかったな……」

 ソファに座って美味しそうな食べ物を眺めながら二葉がポツリとつぶやくと、匠は隣に座ってシャンパンの入ったグラスを手渡す。

「確かにね。でもあの日の出会いも、今回の再会も、もしかしたら仏様が準備してくれたのかもよ」
「最近ちょっと思うの。私がだめんずばかりに引っかかったのは、匠さんと出会うためだったのかなぁって」
「相変わらず壮大な発想。でもそうだとしたらすごいことだよね」
「……私、もっと写経書いて般若心経の練習しないと。仏様に感謝してもしきれない」
「あはは! 今も毎日一枚書いてるの?」
「最近は残業も多かったから、休みの日とかに書いたりはしてるけど」
「ふーん……」

 匠は不敵な笑みを浮かべると、二葉をソファに押し倒す。

「でも今週末は全部俺の時間だから。いい?」

 二葉が返事をする間も無く、唇を塞がれた。
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