客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 日本に戻ることになって、一番の気掛かりがそれだった。でもあれから六年も経っている。気にすることはないと思っても、まるで洗脳のように俺の心に影を落としていた。

 だがその不安を超える出会いが待っていたんだ。そんなことが起きるなんて予想もしていなかった。

 古巣に戻って、同期をからかいに行った。まさか隣にいた可愛らしい女性が、あの時の二葉だと知った時の喜びは説明し難い。

 初めは気付かなかった。髪の色も髪型も全く違ったし、服装だって違う。でもあの屈託のない笑顔と、優しく響く少し低い声が、彼女であることを教えてくれた。

 しかも告白した俺に『ちゃんと恋愛をしたい』と、体の関係を否定した。確かにあのまま始めていたら、六年前の延長になったかもしれない。

 今の二人を知った上で、それでも好きなら本物と言いたかったんだろう。そういう頑固なところはあの日の二葉と変わらない。

 俺が忘れられなかったのは先生じゃなくて二葉だった。先生のことを二葉は知ってるし、帰国するまで抱えていた不安は彼女との日々ですっかり薄れている。
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