客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
ただ先週の突然かかってきたあの電話……。一体なんだったんだろう……。
「匠さん?」
二葉の手が匠の頬に触れ、匠はようやく我に返る。彼女は心配そうに匠を見つめていた。
「……何か悩み事? 時々上の空になってる」
あの電話のことを話すべきだろうか。でも今この幸せな時間に水を差したくないのも事実だった。
匠が困ったように下を向くと、二葉は彼をぎゅっと抱きしめる。
「……あのね、秩父での時はたまたま知り合った二人だった。だから匠さんに何か悩みがあるのはわかっていたけど、本人が言わないなら聞かない方がいいと思ったの。でも今は……ちゃんと恋人同士でしょ? もし何かあるなら聞くよ。隠し事はしないでね」
その言葉を聞いて、匠は呼吸をするのを忘れてしまった。恋人同士だからこそ、踏み込める場所もあるのか……。言わないことが、心配をかけないことだと思っていた。でも二葉にとっては逆で、隠し事をされると不安になるんだ。
匠は二葉を抱き上げると、自分の膝の上に乗せる。そして彼女を抱きしめ、温かい胸に顔を埋めた。
心臓の音が心地良く響く。そんな匠を彼女は両手で優しく包み込んだ。
「……愛してるよ、二葉……」
「うん、私も」
その時だった。匠のスマホにメールが届く音がする。
画面を見た匠が体を震わせた後に硬直する。その瞬間、二葉は匠の身に何かが起きていることをはっきりと理解した。