客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 画面には『着信のお知らせ』の文字とともに、番号が表示されている。

 この番号を二葉は知っていた。特徴的な下四桁。秩父にいた時、匠がシャワーを浴びている時に見たのを覚えている。

『着信 先生』

 あの時はまだ話を聞く前だったし、だから私も何も聞かなかった。

「……そっか……そういうことか……」

 二葉は独り言のように呟く。着信のお知らせのメールが来るということは、匠さん自身は着信拒否をしているということ。これは二葉自身の実体験として知っていた。

 不安になる気持ちを押し殺し、二葉は尋ねる。

「……先生とは続いてるの?」
「続いてない! 二葉と同じ、秩父の後にちゃんと別れた。最近になって急に連絡が来るようになったんだ……」

 匠の項垂れた様子を見る限り、きっと事実だろう。

「……いつから連絡が来るようになったの?」
「……社員旅行の日から。でも電話には出てないから……。二葉に言おうか悩んだ。でも二葉には先生のことを話していたし、心配をかけたくなくて隠してた……」

 二葉はため息をつくと、匠の頬をつねる。匠は目を見開き二葉を見る。確実に怒っている。

「私を甘く見ないで。そんなことで(ひる)んだりしないよ。それよりスマホを貸して」

 匠が渡すと、二葉は慣れた手つきて何やら操作していく。終わると匠に渡した。

「着信のお知らせが来ないように設定したから。これで連絡が来ても完全にわからないよ」
「そんな設定出来るの? よく知ってるね」
「うん。元彼がうるさかった時にやったことがあるから」
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