客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 真梨子に付いて、ホテルのラウンジに入る。二葉が勤めるホテルのグループのものではなかったが、昔からある老舗のホテルだった。

 ここは系列に高級旅館もあって、二葉はいつか来たいと思っていた。しかしまさか《《先生》》と来ることになるとは……。

 壁際の角の席に案内されると、二人は座り心地の良さそうな一人掛けのソファにそれぞれ腰を下ろす。

 夜ということもあり、多くの人がチェックインを待っていた。

「私は紅茶。あなたは?」
「ホットコーヒーをお願いします」
「……あなたもコーヒーを飲むのね。匠と一緒」

 二葉はその言い方が気に入らなかった。まるで匠のことをなんでも知っているとでも言われたような気分になる。

「そうですね。匠さんとはよくカフェ巡りをしたりしますよ」

 実際は巡礼の休憩で入った喫茶店で美味しいコーヒーに出会い、二人して興奮しているのだが、そこは伏せる。

 二人の間に、見えない火花が散っていることは確かだった。
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