客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
心配
 二葉と匠はタクシーに乗って、彼のマンションへと帰った。自分の家で良かったのに……と二葉は言ったが、匠はそれを許さなかった。

 彼の部屋に泊まるようになってから、自分の私物も少しだけ置くようにしていた。そのため、明日の仕事へも違う服を着て行ける安心感があった。

 マンションに着いてから、二人は無言だった。何を話せばいいのかわからなかったのだ。

 二葉は洗面所でうがいをしていた匠の背中に抱きつくと、
「お風呂……一緒に入ろう?」
と言う。

 すると匠は頷き、二人は互いの服を脱がせると、浴槽に身を沈める。二葉は匠の体に寄り掛かり、ほうっと一息ついた。

「……疲れた?」
「うん……精神的にね……。あっ、でもどうしてあの場所がわかったの? 突然現れたからびっくりした」
「木之下から連絡が来てさ、二葉が女の人に連れて行かれたって」

 そうか。二人より先にエレベーターを出たことが功を奏したんだ。
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