客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
曖昧論

京子の場合

 京子は珍しくため息をついて肩を落としては、口を閉ざして下を向く。

 今日のランチは京子の希望でインドカレーになったのに、その本人はナンを片手に、全く食が進んでいなかった。

 美玲、彩花、二葉はどうしていいのかわからず、黙々と食べている。

「あの……京子ちゃん、何かあった?」

 我慢の限界に達した彩花が、京子の顔を覗き込みながら尋ねた。すると京子ははっと我に返り、慌ててナンをカレーにつけてから口に含む。

「おしゃべりな京子ちゃんが黙ってるって、なんかすごく違和感ありありなんだけど!」

 京子はまたため息をつくと、目を伏せる。

「……今ね、気になってる人がいるんだ」
「えっ、まさかの恋バナ⁈ 相手は誰?」
「……冨永(とみなが)課長……」
「えっ、冨永課長って私たちより十歳くらい年上だったよね⁈ なんでいきなり⁈」
「あれっ、しかも結婚してなかったっけ?」
「ま、ま、まさか……不倫?」
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