だから今度は、私がきみを救う番
嘘。
原くんはきっと、嘘をついている。
なんてね、って何でもないような顔して平気ぶって。
私さ、最初は自分のことしか考えてなかったよ。
自分が世界でいちばん可哀想で、大変だって毎日思ってた。
原くんにも自分の話ばかり聞いてもらって、きみの抱えてるものなんて何も知らないけれど。
きっと、何かあるんだろう。
「いいよ……」
それだけつぶやいて、私は原くんの頭を撫でた。
ゆっくりとゆっくりと、ただ優しく頭を撫でていく。
窓の向こうはもう曇っていて、嵐を予感させる空だ。
それから三十分ぐらい、ずっとそうして抱きしめ合っていた。