だから今度は、私がきみを救う番



「ううん。私こそだよ。ありがとう」



そう言うのが精一杯だけど。

彼女と私の間にある壁は、消えてしまったみたいだな、と思った。

鞄からお菓子を取り出し、小笹さんと一緒に丸山さんの元へと向かう。



「リミちゃーん、亜季ちゃんがお菓子持ってきたよー!」

「亜季ちゃんだ! わー! ありがとう!」



私たちが駆け寄ると、丸山さんが笑顔でぶんぶんと手を振りながら、私たちのところへ向かってきた。

私たち三人はぎゅーっと抱きしめ合って、再開を喜んだ。

みんな不安だったんだ。



この日私は初めて、温もりを確かめ合う相手は恋人だけじゃないことを知った。

雨が屋根を叩く、嵐の夜だったけど。

友達もいいもんかもしれないなって、初めてちょっとだけ思ったんだ。



その後雨はやみ、川が氾濫する直前で水が引いていった。

大事には至らなかったけれど、この日のことを私は忘れないと思う。



不安でいっぱいな夜の中、ちょっとだけ楽しいな、って思った日のことを。


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