だから今度は、私がきみを救う番
原くんはいつもそう。

自分は何でもないふりをして、私のそういうところには敏感で。

ひどく優しくなる。



私が仙台に行ったらどうするって聞いた時さ、寂しそうな顔したでしょう?

あんなにせつない表情を見せたくせに、寂しがり屋なくせに。

今だって、何でもないような顔をして、私に優しくしてくれる原くん。



どうすればきみに寄り添えるかな。

どうすればきみの傷を癒せるのかな。

そう思うけれど、やっぱり今は自分のことでいっぱいいっぱい。



「抱えてるもんあるなら、海に向かって叫ぶといいって。ほら」



原くんはそう言って、私の肩をぽんと叩いて。

それから私の右手をぎゅっと握って、深い青色をした海を見た。

ほら、って言われたところで、私は言葉を発することが出来ない。

叫びたいことはたくさんあるのに、喉の奥につっかえて出てこない。
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