だから今度は、私がきみを救う番
「亜季の母ちゃーん! 亜季にこんな顔させるんじゃねーよ!」
黙りこくった私の隣で、原くんが叫ぶ。
後ろから強い風がづいて、原くんの低い声を海原のむこうに響かせた。
「亜季の気持ちも考えてくれよー! 頼みます! 俺は亜季の笑顔が見たいんだ!」
握られた手に、ぎゅっと力が込められる。
これまに聞いたことのないほどの、彼の大きな声。
枯れてしまいそうな大きな声が、古い港じゅうを、波打つ海面を、停められた漁船を、今は使われていない小さな灯台を包んでいく。
ねえ、原くん。
ありがとうね。
私はあなたを救いたい。
だから。
まずは私が救われる番。