だから今度は、私がきみを救う番
閉じられた喉を開いたら、すうっと潮の混ざった空気が入ってきた。

それを思いっきり吸い込んで、声と共に吐き出す。



「……おっ、お母さんのばーか! ばーか! ばーか!」



原くんに比べたら、随分と小さい声だけど。

心の奥に閉じ込めてた想いを、声に乗せて響かせる。



「私よりも男の方がだいじなくせに!」



もっと、大きな声が出せる。

そう思って、お腹の奥から声を鳴らした。



「お母さんのばーか! 私とお姉ちゃんのこと、捨てたくせに!」



もっと、響かせられる。



「今さら何なんだよ! あんたのとこなんて、行かないよ!」



原くんの左手をぎゅっと握って、二酸化炭素を吐き出す。



「さっさと連絡よこしてくれれば良かったのに! 遅いんだよ!」



私だって、こんなに大きな声が出る。

愚痴だって言える。

私は弱虫なんかじゃない。


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