だから今度は、私がきみを救う番





午後の授業中、原くんはずっと起きていた。

四六時中寝ている彼が起きているなんて、本当に珍しいことなんだけど。

それよりも私は、帰りの約束が気になってしょうがなかった。



「原くん、今日号令してみる?」



六時間目の終わり、山中先生が彼に声をかけた。

原くんは髪をかきあげると、

「えー、しょうがねえな」と子どものように答えた。



いつも、『おう』とか『っす』とかしか言わない原くんの、貴重な受け答えシーン。

先生がびっくりした顔をしていたけど、すぐに冷静になって彼に終わりの号令をお願いした。



「きりーつ」



原くんの低い声が、教室いっぱいに響く。

私が立ち上がると、原くんはさらに大きな声で「れいっ」と言った。



六時間目が終わったら、二年一組での終礼だ。

つまりそのあと、一緒に帰る放課後が待っている。

そう思うだけで、心臓がばくばくと音を立てて、空だって飛べそうな気持ちになってしまう。
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