だから今度は、私がきみを救う番
「お母さん、あなた達が小さい時、震災ボランティアで東北に行ったことがあったでしょう?」
改札の方へと進みながら、お母さんが話しはじめる。
そういえばそんなこともあったなぁ、と思い出す。
とは言っても小さい時だったから、後からお母さんに聞いた話を覚えている、という感じなんだけど。
「うん」
「本当はその時にね、初めて出会ったの。だから病院で再開して、驚いたのよ。これは、偶然じゃないって」
「……そうなんだ」
「あなたの好きな子がこの街にいるのも、偶然じゃないかもしれないわね」
そう言われて、胸がドキンと震えた。
いやな感じじゃない震えだった。
原くんの手紙に書いてあったことを思い出す。
『亜季の連絡ノートを拾ったとき、俺と同じもん抱えてんだって分かって、運命だって思った。
置いてかれたもん同士。そんな偶然なかなかないよ。偶然じゃない。俺らは運命の赤い糸で繋がってるんだって、そんなこと本気で信じたよ。』
運命って本当にあるのかもしれないって、原くんに会って初めて思った。
そんな偶然なかなかないって、私も本気でそう信じた。
きっとお母さんも、この人に運命を感じたのだろう。
それでも置いて行かれたことはやっぱり許せないし、この人に馴れ馴れしくされるのもイヤだけど。
お母さんにはお母さんなりの理由があったんだなって、少しずつ思えるようになってきた。
本当に、少しずつだけど。
それはきっと、原くんが私に運命を教えてくれたから。