だから今度は、私がきみを救う番
改札から出ると、お母さんたちに連れられて牛タンの有名なお店に行った。
初めて食べる牛タンは柔らかくて、食べやすくて、びっくりするほどおいしかった。
牛タンを食べ終わって、デザートで口直しをした頃、お母さんが私の方をじっと見て口を開いた。
真面目な顔だった。
前原さんはその横で、にこにこと笑っている。
「亜季……、本当は個人情報だから言ってはいけないんだけど」
お母さんが私を見つめたその瞳は、これまでで一番濁りがなかった。
「お母さんの働いてる病院にね……、お兄さんのために皮膚移植した子が入院してるの」
「え……」
「あなたの住んでる街から来たって言うから、びっくりしちゃった」
私はぐっと瞳を見開いた。
心臓がどくん、どくんと波打つ。
もしかすると、お母さんの勘違いかもしれない。
でも……。ううん、きっとそう。
彼はそこにいると、心がそう感じている。
「会いに行く……?」
そう聞かれて、咄嗟に首を縦に振っていた。
「……うん!」と大声で答え、私はお母さんの方を見る。
そして笑って、「ありがとう!」と伝えた。