だから今度は、私がきみを救う番
「今さ、俺、亜季に会いたいって思ってたんだ」
「うん」
「そしたら、奇跡が起きた」
「うん」
「何も言わずにこっち来て、ごめん」
「本当だよ、ばか」
お互いに、抱きしめ合う力を強める。
痛いくらいに抱きしめ合って、それから目を合わせてふたり笑った。
「ねぇ、明日さ、綺麗なもの見に行こうか」
私がそう言うと、原くんはまた驚いた様子になって、目を丸く見開いた。
原くんの金色の髪が、窓から吹き込む風に揺られてきらきらと光る。
私はその髪を撫でながら、話を続けた。
「私ね、原くんが海に連れてってくれたおかげで、すっきりしたんだ。自分の心の奥にあるモヤモヤがなんなのか分かって、気持ちの整理が出来た気がする」
一方的に話しかけるだけの私の言葉を、原くんの耳はきっちりと受けとめてくれている。
彼の瞳を見ればそれが分かった。
「だからね、今度は私がきみを救う番」
「……どこに?」
「海に行こう?」
「うみ……」
「原くん、叫ぼう」