だから今度は、私がきみを救う番



「お父さんがそんなんだからお母さんどっか行っちゃうんだよ!」

「親に向かってその口の聞き方は何だ!」



耳を塞ぐようにして、自分の部屋へと逃げる。



お腹の奥がしくしくと痛んでつらい。

二人の罵り合いが聞こえないように、イヤホンを耳に押し込んだ。

スマホのBluetoothをオンにして、音楽をジャカジャカと流す。



聞きたくない。

何も聞こえなくていい。

あれを聞くくらいなら、耳が聞こえなくなっちゃえばいいのに。



今の私には、今日の恋を思い出す余裕もない。



「原くん……」



さっきバイバイしたばかりなのに、もう会いたいな、って思った。

ベッドの上に寝転がり、両手で目を覆う。



『……高屋、楽しいことしようぜ。もうすぐ夏休みじゃん?』



夏休み、早く来るといいな。



原くんのことを考えながら、そっと目を瞑った。


< 40 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop