だから今度は、私がきみを救う番



その顔が可愛くって、それからかっこよくって。

たったその一言で、私の心は跳びはねてしまう。

きっと今、顔が赤くなってるんだろうな。



「じゃあ、着る」



そうこぼしたら、原くんがぎゅっと手を握ってきた。

廊下から知らない男子生徒の声が聞こえる。



教室の前を、何人もの生徒が通りすぎていく。

それなのに、原くんは誰に見られるのも構わないという様子で、私の手を握った。



「ふふ、高屋、顔まっか」

「だって……」

「だって、なぁに?」



だって、原くんが手を握るから。



続きの言葉すら出てこなくって、身体が干からびそうになる。



あと二日で夏休みだ。

早くふたりで花火大会に行きたいな。



指先から伝わる熱にうなされているうちに、四時間目の始まりを告げるチャイムが鳴る。

原くんは名残惜しそうに、席へと戻っていった。




ねぇ、原くん。



今朝の原くんと、今の原くんは同じ人なのかな。

原くんって二人いるの?



そんなことを考えながら、四時間目の社会の授業中はずっと右手を触っていた。

触れられて握られた、きみの余韻に浸りながら。
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