だから今度は、私がきみを救う番
「高屋、たのしーね」
「うん、楽しいね」
踏切をこえて、駅舎の前を通りすぎ、県道を進んでいく。
学校の近くを通る時はかなりドキドキした。
夏の匂いでいっぱいの風に押されて、自転車はどんどん速度を増す。
土手道へ続く上り坂はさすがに一回降りたけど。
土手道に上がったらもう一度彼の腰に抱きついて座って、自転車は進みはじめた。
風が、ふたりを加速させる。
七月の熱風が、原くんの金髪と、私の黒髪を揺らす。
水面はきらきらと輝いて、空は快晴、空も水面も見事なブルー。
このまま空だって飛んでしまえそうだなって、そんなばかなことを本気で思った。
「ね、高屋」
「なぁに?」
「高屋は俺と一緒にいてくれる?」
なぁに、その質問。
私はふふっと笑って「うん」と頷いた。
きみの質問に込められた意味も、きみの気持ちも。
きみが抱えているものだって、何ひとつ知らなかったのにさ。
ばかみたいだね。
きみに好かれて調子に乗ってたんだ。
「一緒にいるよ」
そんな、小さな約束を交わして、私たちは河川敷を駆け抜けていく。
夏の風に乗って、どこまでも行けそうな気がした。
私は恋のときめきと楽しさに浮かれて、ただ彼にしがみついていた。