だから今度は、私がきみを救う番
美容院では、店員さんが慣れた手つきで浴衣を着せてくれた。
紺色の布地に、ピンクや赤で蝶の模様が描かれている浴衣。
少し大人っぽい濃い赤色の帯が綺麗だ。
これはぜんぶ、お姉ちゃんのお下がり。
去年はもうちょっと子どもっぽい浴衣だった。
髪の毛はアップに結って、花の飾りをつけてもらった。
下駄の先では、昨日念入りに塗ったペディキュアが光っている。
美容師さんがお化粧までしてくれて、いつもよりちょっと大人っぽい私が完成した。
「亜季ちゃん、今年はちょっと大人っぽいね」
美容師のお姉さんが、そう言って帯を整えてくれる。
「彼氏と行くの?」
「えっ。なんで分かるんですか?」
「亜季ちゃん、恋する乙女の顔してるからさ」
そんなことを言われたら、顔に出ちゃってるのかなって心配になってくる。
鏡に映る顔が赤い気がするのは、さっき塗ってもらったチークのせいだ。
そう言い聞かせて、胸の高鳴りを抑える。
「楽しんでねー!」
そう言うお姉さんに手を振り、一度家に帰った。
これから、初めて男の子とふたりで花火大会に行く。
夜に出歩くだけでもドキドキするのに、これからのことを考えると緊張してしょうがない。
身体の奥がふつふつと煮えたぎって、どこかに飛んでいってしまいそうだ。