だから今度は、私がきみを救う番



美容院では、店員さんが慣れた手つきで浴衣を着せてくれた。



紺色の布地に、ピンクや赤で蝶の模様が描かれている浴衣。

少し大人っぽい濃い赤色の帯が綺麗だ。



これはぜんぶ、お姉ちゃんのお下がり。

去年はもうちょっと子どもっぽい浴衣だった。



髪の毛はアップに結って、花の飾りをつけてもらった。

下駄の先では、昨日念入りに塗ったペディキュアが光っている。



美容師さんがお化粧までしてくれて、いつもよりちょっと大人っぽい私が完成した。



「亜季ちゃん、今年はちょっと大人っぽいね」



美容師のお姉さんが、そう言って帯を整えてくれる。



「彼氏と行くの?」

「えっ。なんで分かるんですか?」

「亜季ちゃん、恋する乙女の顔してるからさ」



そんなことを言われたら、顔に出ちゃってるのかなって心配になってくる。

鏡に映る顔が赤い気がするのは、さっき塗ってもらったチークのせいだ。

そう言い聞かせて、胸の高鳴りを抑える。



「楽しんでねー!」



そう言うお姉さんに手を振り、一度家に帰った。



これから、初めて男の子とふたりで花火大会に行く。

夜に出歩くだけでもドキドキするのに、これからのことを考えると緊張してしょうがない。

身体の奥がふつふつと煮えたぎって、どこかに飛んでいってしまいそうだ。


< 71 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop