だから今度は、私がきみを救う番
花火とキス2
◇
花火が終わると、人々は様々な方向へと散らばっていった。
ぎゅうぎゅう詰めだった河川敷の階段も、ぽつりぽつりと人が減っていく。
土手道は人でごった返していて、人間の渋滞が出来ていた。
「高屋さ、帰りもうちょっと遅くなっても大丈夫?」
少し周りが静かになってきた頃、原くんがそう言った。
お姉ちゃんが夜中に帰ってくることもあるから、うちの門限はすっかり緩くなってしまている。
今日は花火大会なので、ちょっと遅くなっても大丈夫だろう。
「うん」
「俺、高屋に夢中で花火あんま見てなかったからさ。花火やろうよ」
「花火?」
「前に言ったじゃん? ロケット花火、びゅーんってやろうって」
初めて彼といっしょに帰った日、寄り道をした時のことを思い出す。
そうだった。
きみは確かにそう言った。
瞳をきらきら輝かせて、『楽しいことしよう』って。
「うん」
「やった。先輩んちにチャリ置いてるからさ。海の方行こう」