だから今度は、私がきみを救う番
わずかな街灯の明かりに照らされた原くんの顔を、ちらりと見る。
海を見つめる彼の顔は、どこか寂しそうな顔をしていた。
『一年生の時と同じ原くん』とも『不良の原くん』とも少し違う、遠くを見るような瞳。
その顔がどこか不安を抱えているように見えて、私は彼の手を握る力をぎゅっと強めた。
原くんが見つめている夜の海を、私も見つめる。
沖の方には漁火がぽつぽつと灯っていて、あたたかで綺麗だった。
「夜の海って綺麗だね」
見えたままの景色を口にすることしか出来ず、そう零す。
ねえ、原くん。
きみは何かを抱えているの?
どうして時々曇った瞳をするの?
私に出来ることが、ひとつはあるのかな?
あるのなら、教えてほしいよ。
だって今、私はきみに救われているから。