「私の為に、死んでくれませんか?」 ~君が私にキスしない理由~
営業日記 1
「ーよっ、綾月。今日も一件契約取ったんだって?最近頑張ってるじゃん」
定時退勤のため全力で報告書を書いていると、隣席の野島先輩が声をかけてくる。私はうきうきして、見せつけるかのようにパソコンのモニターを軽く叩いた。
「そうですよ。最初はこっちの話聞いてくれなくて結構苦労しましたけど、結局泣きながら契約書にサインしてくれました」
「今回はなんの特典付けたの?」
「特典ていうものでもないです。おじいさん、調べたら若い頃ボランティア活動とか寄付とか、良いこといっぱいしていた良い方で。もう既に豪華クルーズのチケットが出ていました。それと、もう一つ…」
「もう一つ?」
「先に亡くなった奥様と一緒にクルーズに乗せてあげるって約束しました。したらもうその後は契約まで一瀉千里、って感じですね」
「へえーやるじゃん。目標まで後何人?」
「あと…もう32人です」
「頑張れよ。俺も後10人だから」
野島先輩はそう言って、「では、営業行ってきますー」と言い残してオフィスを出た。私も視線を戻し、自分の報告書を早く終わらせるため集中した。
50人くらい入る広いオフィスに、カチャカチャと私がキーボードを打つ音だけが響く。今出ていった野島先輩と同じく、このオフィスには真っ黒のスーツに真っ黒のネクタイをしている人でいっぱいだった。皆それぞれパソコンを見たり、タブレットを見たりしながら忙しく働いている。そして…
「よし、終わった!では先に失礼します!」
定時退勤のため全力で報告書を書いていると、隣席の野島先輩が声をかけてくる。私はうきうきして、見せつけるかのようにパソコンのモニターを軽く叩いた。
「そうですよ。最初はこっちの話聞いてくれなくて結構苦労しましたけど、結局泣きながら契約書にサインしてくれました」
「今回はなんの特典付けたの?」
「特典ていうものでもないです。おじいさん、調べたら若い頃ボランティア活動とか寄付とか、良いこといっぱいしていた良い方で。もう既に豪華クルーズのチケットが出ていました。それと、もう一つ…」
「もう一つ?」
「先に亡くなった奥様と一緒にクルーズに乗せてあげるって約束しました。したらもうその後は契約まで一瀉千里、って感じですね」
「へえーやるじゃん。目標まで後何人?」
「あと…もう32人です」
「頑張れよ。俺も後10人だから」
野島先輩はそう言って、「では、営業行ってきますー」と言い残してオフィスを出た。私も視線を戻し、自分の報告書を早く終わらせるため集中した。
50人くらい入る広いオフィスに、カチャカチャと私がキーボードを打つ音だけが響く。今出ていった野島先輩と同じく、このオフィスには真っ黒のスーツに真っ黒のネクタイをしている人でいっぱいだった。皆それぞれパソコンを見たり、タブレットを見たりしながら忙しく働いている。そして…
「よし、終わった!では先に失礼します!」