「私の為に、死んでくれませんか?」 ~君が私にキスしない理由~
どうしたんだろ。先輩がはっきり答えないまま、時間だけが流れていく。いつ営業対象がこの先に現れるか分からないのに、先輩がこのままだと、もし私が何かミスしたときうまく対応できないかも知れない。この考えにたどり着いた私は焦って先輩に何度も確認した。
「先輩、本当になにがあったんですか?」
「な、なんでもねーよ。余計な心配だ」
「いや、絶対なにかあります。隠さず言ってください」
私のしつこさに少し心が揺れたのか、先輩の瞳が若干揺れる。よし、このままー!私は先輩の手をぎゅっと握り、なるべく優しい声で囁いた。
「野島先輩、私、まだ入ってなにもできないつまらない新人ですが…なにかあったら相談にのりますし、できるだけのことはします。だからどうか、本音を聞かせてください。一体何があったんですか?」
私の言葉に先輩の目が潤むのが見えた。深い闇の中、その涙がとても美しく感じる。野島先輩は何度も悩んで、そして何かを決心したかのように私に顔を近づけた。
「良く聞け、綾月。これは決してお前に格好良く見られたかったとか、そういうバカバカしいことを気にして黙っていたわけではない」
「はい」
「これは、あの…あれだ。魂になったとしても、人間ならどうしようもならない運命的な、そういうことなんだ」
「はい、逆らえない運命のことですね。はい、ーで?一体何ですか?」
野島先輩が深く息を吸う。そして強い眼差しで、こう言った。
「俺、今うんちしたい」
数秒くらい沈黙が流れる。一瞬なにかの聞き間違いかと思ったけど、そうではないようだ。なぜなら、早速下の方から「ぶん!」と音が聞こえたから。光のような速度で手を離した私は素早く先輩から離れた。
「あーだから、う…いや、トイレに行きたくて冷や汗をかいていたんですね」
「ど、どうしようもないことだろ!さっきから出そうでやばかったんだよ!」
「あーはい。もうそれくらいならどこかで処理して来たらどうですか?山の奥だし、誰にも見られずにできると思いますよ」
もう色々と面倒くさいと思い、私は白目で適当なところを指した。暗いし、誰にもーもちろん私はいるけどー気づかれず用は済むはず。それでも先輩はすぐ行かず、私を見てもじもじしていた。
「早くいかないんですか?どうしようもない運命的なことじゃないですか?」
「いや、そうだけど…!確かにそうだけど!お前、一人で大丈夫か?」
「…?大丈夫ですよ。先輩が戻ってくるまで待ちます」
「お前、絶対俺が来るまで待つんだよ。分かったな?絶対だからな!」
「そんなに言われなくてもちゃんと待ちます。早く行って」
私がそう答えても、野島先輩は何度も何度も確認した。流石にちょっとうざい…と思うまで同じ内容を繰り返した先輩は、やっとお尻を両手で支えて暗闇の中へ去っていった…が、すぐ戻ってきて私に聞いた。
「ごめん、ティッシュ持ってる?」
「あ、もう!いい加減にしてください!」
ー私が覚えている限り、先輩にイライラしたのはこれが最初で最後だった。
そして、ある程度予想はしていたがー
先輩は、本当にどれだけ時間が経っても戻ってこなかった。
「先輩、本当になにがあったんですか?」
「な、なんでもねーよ。余計な心配だ」
「いや、絶対なにかあります。隠さず言ってください」
私のしつこさに少し心が揺れたのか、先輩の瞳が若干揺れる。よし、このままー!私は先輩の手をぎゅっと握り、なるべく優しい声で囁いた。
「野島先輩、私、まだ入ってなにもできないつまらない新人ですが…なにかあったら相談にのりますし、できるだけのことはします。だからどうか、本音を聞かせてください。一体何があったんですか?」
私の言葉に先輩の目が潤むのが見えた。深い闇の中、その涙がとても美しく感じる。野島先輩は何度も悩んで、そして何かを決心したかのように私に顔を近づけた。
「良く聞け、綾月。これは決してお前に格好良く見られたかったとか、そういうバカバカしいことを気にして黙っていたわけではない」
「はい」
「これは、あの…あれだ。魂になったとしても、人間ならどうしようもならない運命的な、そういうことなんだ」
「はい、逆らえない運命のことですね。はい、ーで?一体何ですか?」
野島先輩が深く息を吸う。そして強い眼差しで、こう言った。
「俺、今うんちしたい」
数秒くらい沈黙が流れる。一瞬なにかの聞き間違いかと思ったけど、そうではないようだ。なぜなら、早速下の方から「ぶん!」と音が聞こえたから。光のような速度で手を離した私は素早く先輩から離れた。
「あーだから、う…いや、トイレに行きたくて冷や汗をかいていたんですね」
「ど、どうしようもないことだろ!さっきから出そうでやばかったんだよ!」
「あーはい。もうそれくらいならどこかで処理して来たらどうですか?山の奥だし、誰にも見られずにできると思いますよ」
もう色々と面倒くさいと思い、私は白目で適当なところを指した。暗いし、誰にもーもちろん私はいるけどー気づかれず用は済むはず。それでも先輩はすぐ行かず、私を見てもじもじしていた。
「早くいかないんですか?どうしようもない運命的なことじゃないですか?」
「いや、そうだけど…!確かにそうだけど!お前、一人で大丈夫か?」
「…?大丈夫ですよ。先輩が戻ってくるまで待ちます」
「お前、絶対俺が来るまで待つんだよ。分かったな?絶対だからな!」
「そんなに言われなくてもちゃんと待ちます。早く行って」
私がそう答えても、野島先輩は何度も何度も確認した。流石にちょっとうざい…と思うまで同じ内容を繰り返した先輩は、やっとお尻を両手で支えて暗闇の中へ去っていった…が、すぐ戻ってきて私に聞いた。
「ごめん、ティッシュ持ってる?」
「あ、もう!いい加減にしてください!」
ー私が覚えている限り、先輩にイライラしたのはこれが最初で最後だった。
そして、ある程度予想はしていたがー
先輩は、本当にどれだけ時間が経っても戻ってこなかった。