謎解きキッチンカー
時々キッチンカーの中から次のお客さんが誰かわからず困っているお兄さんの声も聞こえてくる。


順番を抜かされて怒るお客さんもいるんじゃないのかな?


香織は以前スーパーで順番を無視して、後ろに並んでいたお客さんと喧嘩になっていた人を思い出し、内心ハラハラしていた。


しかし、ここに並んでいるお客さんたちはみんな笑顔だ。


ときどき「このキッチンカーのお兄さんカッコイんだよね」とか「今日こそ番号聞くんだ」なんて声も聞こえてくる。


どうやらみんな少しでもお兄さんの顔が見える場所に行こうとして、列からはみ出してしまうみたいだ。


おまけにお兄さんと会話しようとするお客さんが多くてなかなか進まない。



その時、香りのお腹がぐぅぅぅと音を立てた。


このままじゃお腹が減って倒れちゃうよ。


広間の時計を見て見ると、とっくにお昼は過ぎていた。


それなのに列は一向に進まない。


香織はグッと唇をかみ締め、それから大きく息を吸い込んだ。
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