謎解きキッチンカー
今日は楽しい花火大会で、藤田さんのお手伝いをして、できれば名探偵も発揮して。


そう、そんな一日になるはずだったし、実際に香織はそのすべてをしていた。


それなのに、今は一人ぼっちで石段に座っている。
 

やがて第二部を開始するアナウンスが聞こえてきて、花火の打ち上げが再開された。


しかし香織はうつむいたままで顔を上げなかった。


足と体の間に顔をうずめるようにして微動だにしない。


花火の打ち上げの音を聞くたびに涙が流れて、顔を上げることもできない。



藤田さん、迎えに来てくれないかな……。


「香織!!」


自分を呼ぶ声がして大きく息を飲んだ。


「藤田さん!?」


顔を上げると同時にそう言った香織の視界に入ってきたのは、両親の姿だった。
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