謎解きキッチンカー
☆☆☆

親に言うと絵日記を見せて驚かせることができない。


お兄さんに提案されたときから香織はそう思っていた。


誰にも内緒でキッチンカーのお手伝いをして、ビックリさせたい気持ちが強くなっていた。


そこで香織は一旦家に戻ってクレープを冷蔵庫へ片付けると、簡単に昼ごはんを済ませた。


「あら、もう行くの?」


「友達を待たせてるから」


あわただしく家を出て行く香織の後ろから母親が「早く帰るのよ」と、声をかけてくる。


香織はそれに返事をせず、傘を掴んで外へ出た。


すでに雨が降ってきていて、マルシャは中止になってしまっただろうと思った。


それでもまだお兄さんは待ってくれているはずだ。


足元がぬれるのもかまわずに走って広間へ向かう。
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