謎解きキッチンカー
女の子の父親がそう声をかけても「嫌だぁ!!」と泣き声をあげる。


子供にとってオモチャはそれひとつしかないのだ。


代わりのものとか、同じものを買ってもらっても意味がない。


香織にもその気持ちはいたいほどに理解できた。


胸をギュッと掴まれた気分になった香織は女の子の手を掴んで立ち上がらせた。


「それじゃ、お姉ちゃんと一緒にそのぬいぐるみを探しに行こう」


「いいの?」


「もちろん! お姉ちゃんは今社会勉強中なの。これもきっと、社会勉強のひとつだから」


説明しても女の子はキョトンとしている。

だけど一緒にぬいぐるみを探してくれる香織に好意を感じているようだ。


「ごめんね、騒がせちゃって」
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