謎解きキッチンカー
☆☆☆

一時間ほどで作文を仕上げた香織はようやく家を出ることができた。


藤田さんとの約束場所は最初に出会ったあの広場。


約束時間まであと二十分くらいだ。


まだまだ十分に時間はあるけれど、気持ちが前へ前へと向かっている香織の足は止まらない。


走って走って、あっという間に広場に到着してしまった。


今日はなんのイベントもないようで広場は閑散としていた。


駐車場には車ひとつ停まっていないし、広場の中にも人の姿はなかった。


香織は呼吸を整えて広場の中へ入り、隅っこに置かれている木製のベンチに座った。


ベンチはヒヤリとつめたくて、朝露で少しだけぬれていた。


空を見上げて見ると風が拭いてきて雲が流れていくのが見える。
< 52 / 138 >

この作品をシェア

pagetop