謎解きキッチンカー
藤田さんは香織からカットされたバナナを受け取り、それをキレイに生地の上に載せていく。


香織がキッチンカーの窓から外を確認してみると、まだまだお客さんの列が伸びていることがわかった。


次から次へとやってくるお客さんの要望に答えてフルーツをカットするだけで香織には精一杯だった。


生地を焼いて、クリームをぬってフルーツをカットして乗せるなんて、とてもできないと感じた。


「少し休憩していいよ」


夢中になってフルーツを切っていたときそう言われて香織はようやく手を止めた。


見ると列は二人だけになっている。


いつの間にかお客さんは随分とはけたようだ。


それを見た瞬間全身の力が抜けて、小さな椅子に座り込んでしまった。


フルーツをカットするだけなのに、こんなに大変な作業だとは思ってもいなかった。


車内は冷房が効いているもののすでに汗だくだ。
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