謎解きキッチンカー
☆☆☆

午前中は必死に宿題をしてほとんど終わらせることができた。


夏休みもあとわずか。


あれだけ長いと感じていた休みなのに、過ぎてみればあっという間だ。


「お母さん、浴衣着せて!」


お昼ごはんが終わると同時に荒いものをしている母親にねだる。


「浴衣って、まだお昼過ぎたばかりじゃない。もう着るの?」


「今年は早く言って、沢山屋台を回ろうってことになったの!」


香織はあらかじめ考えておいた嘘をついた。


部屋の中で一人で何度も練習したから、言葉がつっかえることもなく、母親も疑っていない。


ただ、また少し香織の胸がチクリと痛んだだけだった。
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