死神は死にたがり少女に恋をする
 すると彼女は数回瞬きをしながら、その視線は徐々に下を向いていき、そのまま俯いてしまった。

「似たようなこと、彼にも、言われたなぁ……」

 その呟きはどこか恨めし気で、俺は「聞かないほうがよかったか?」と聞くものの、彼女は首を横に振って話し始めた。

「……わたしね、重い雰囲気にするのが怖いんだ。“重い”って、拒否られたら、結構きついじゃん……? それで、重くなりそうな話だとか、相手にとって面倒くさいって思われるような話は、できるだけ軽くしたくて、笑う癖がつくようになった」

 それは、彼女の経験談のような気がした。過去にそんな経験で辛い思いをしたから、その“結構きつい”ということがわかるのだろう。
 しかし俺には、彼女が必死に笑顔を貼り付けようとしている理由はそれだけではないように思えた。

「それだけなのか?」
「それだけって、そんな軽いものじゃないんだけど」
「あぁ、いや、別に軽いと思ったわけじゃない。気に障ったのなら謝る。――ただ俺には、お前が自分自身を騙そうとしているように見えてな」

 そう思ったのは、彼女がこの話をしていないとき、つまりは契約を結んだときにも、歪んだ笑みを浮かべていたからだった。

 俺が“一気に全部の感情を食らうことができない”と伝えたときも、声は明らかに気落ちしたそれだったというのに、顔は笑みを浮かべていた。
 なぜそうするのか、というのは俺にはよくわからず、彼女の言った理由だけでは辻褄が合わない部分があって、単純に興味本意で聞いただけだった。

 だが、彼女は俺の言葉を聞いた瞬間に、突然顔をあげ俺の顔を凝視してきた。
 彼女の表情は、目を見張り眉間に皺を寄せた、悲痛さが混じる驚きの感情を浮かべていた。

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