吐息ごと奪ってよ
prologue
―トントントントン
―じゅっわ~
意識が覚醒するなか、規則的なリズムと、鼻先をかすめる甘い香り。
私の1日の始まりを意味する。
そろそろかな~
そろそろ来る頃かな~
「彩花~、時間よぉー、起きてちょうだい」
「う~ん…」
「もぉ、先に食べちゃうわよ~」
どうせなら、私を食べて欲しい。
なんて、、、ね。
永久に叶わない願いだけど。
「ふわぁ~、おはよう。ひーくん。」
「おはよう、ほら、顔洗ってらっしゃい。」
私、松井 彩花と、ひーくんこと、津野 弘(ひろむ)は幼なじみであり、同居人でもある。
お察しの通り、ひーくんは"おネエ"で、恋愛対象は男だ。
だから、長年の片想いを27になっても拗らせている、救いようのない独身女。
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