俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「お前には俺がいるだろ? 俺にも会いにくる奴はいないからな。 お前と一緒だ。 だから、俺がお前の家族、にーちゃんになってやる!」
口をへの字にして、耳まで真っ赤に染めて、魔法の言葉を伝えてくれる。
「にーちゃん…… ? 」
「にーちゃん! 伊織お兄ちゃん!」
嬉しくて何度も呼んだ。
伊織は、掌を顔に当ててフイッっと、顔を横に向けた。
「しつけーよ!」
そう言いながらも、口角を上げる伊織を覗き見るのが、楽しかった。
それでもふとした瞬時に、思う。
寂しくて、毎晩泣いてばかりいるあの子も、小さな子を、揶揄ってばかりのあの子も、その子も皆んな、親が訪ねて来ると途端に、頬に赤みを差して、キラキラと煌めいて、見たことの無い顔を、向けている。
私は、あんな顔をさせる誰かが、皆んなに訪ねて来るのがただ、ただ、羨ましかった。
無条件に愛してくれる存在がいる。
無条件に愛を注ぐ存在がいる。
強く求めても手に入らない。
いつも心に、ポッカリ穴が空いて、風が通り抜けている様で、スースーとして寒かった。
「いつか私にも、あんなキラキラした笑顔を向けられる誰かが、現れると良いな…… 」
一花は「愛」と言うものに、誰よりも強く欲し、強く、強く、憧れていた。