俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
「アミール! カミール! 私よ、愛しのアイシャが、来てあげたわよ!」
突然、病室のドア外から鼻にかかった甘ったるい声がして、ガチャリとドアが開いた。
髪の毛と首元をピンクのスカーフです覆った、背がすらっと高く手足の長い、クールで知的そうな、吊り目のアーモンドアイをした美女が、部屋に入って来ようとするのを、慌てて止める。
「感染するといけないので、完全に治るまでは面会出来ません」
申し訳なく思いながらも、彼女に伝える。
「何でダメなのよ! 部外者の貴方は毎日一緒に居るのに、どうして婚約者の私が会えないのよ!」
アイシャはムッとして、これでもかと、目を吊り上げ私を睨み付けた。
「……このウィルスは、非常に感染力が高く、看護師の私達は事前に予防接種を受けています。 看護でも消毒を徹底して、感染に備えていますので、どうぞ安心してお任せ下さい。」
(……婚約者…… そっか、そうよね、隔離されてどんな様子かも、わからないから、心配するよね。)
イライラして、私に当たりたくなるのも頷ける。
(好きな人が苦しんでるなら、側にいて何かしてあげたい、ましてや、婚約者なら尚更よね。でも出来ないから辛いんだわ…… )
その気持ちわかるわと、私はウン、ウンと頷く。
「……何よ! だったら私も消毒すれば良いんでしょ」
バシャバシャと、設置してあった消毒液を豪快に、手にかける。
「これで文句無いでしょ?」
アイシャはかけた消毒液を乾かそうと、手を二、三度振ると、
「どいて!」
と、私を押し退け強引に病室に入ろうとする。